東京地方裁判所 平成3年(ケ)2048号 決定 1991年10月31日
当事者 別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 債権者の申立てにより、別紙の担保権・被担保債権・請求債権目録2の(1)②及び(2)②記載の手形金債権のうちの四〇〇〇万円の弁済に充てるため、同目録の1記載の抵当権に基づき、別紙物件目録記載の不動産について、担保権の実行としての競売手続を開始し、債権者のためにこれを差し押さえる。
2 債権者のそのほかの申立てを却下する。
理由
1 債権者の申立て
本件は、根抵当権の被担保債権の弁済を受けるため、競売の申し立てがなされた事件である。
債権者が提出した登記簿謄本には、根抵当権の債権の範囲として、証書貸付取引、手形債権、小切手債権と記載されている。
債権者は、主債務者桜井岩次郎に対し平成二年二月二七日貸し付けた金五八〇〇万円について、債務者が連帯保証した債務五八〇〇万円も、証書貸付取引に該当し、根抵当権の被担保債権となると主張し、別紙の担保権・被担保債権・請求債権目録2の債権のすべてについて、競売の申し立てをしている。
2 当裁判所の判断
根抵当権の被担保債権の範囲として、登記簿に記載される取引は、根抵当権者と根抵当債務者との間の取引を意味し、根抵当権者と根抵当債務者以外の第三者との取引を意味しない。
本件根抵当権の登記において表示された証書貸付取引も、根抵当権者である債権者と、根抵当債務者である桜井孝の間の取引をいうのである。
債権者が主張する連帯保証債権は、債権者と主債務者である桜井岩次郎との間の証書貸付取引において発生する債権を担保するものであり、桜井岩次郎との証書貸付取引の過程から通常生じる債権であるとはいえる。しかし、根抵当債務者桜井孝との証書貸付取引の過程から通常生じる債権ではない。
したがって、債権者の主張する連帯保証債権は、本件根抵当権の被担保債権の範囲に入らないものである。
債権者の主張する裏書人に対する手形金の償還請求権は、被担保債権である手形債権に該当する。
そこで、上記手形金の償還請求権についてのみ、競売を開始し、そのほかの申立てを却下することとする。
(裁判官淺生重機)
別紙当事者目録
債権者 本島武治
債権者代理人 高芝重徳
債務者 桜井孝
所有者 桜井岩次郎
別紙担保権・被担保債権・請求債権目録
1 担保権
(1) 平成元年一月一九日設定の根抵当権
極度額 金四千万円
債権の範囲 証書貸付取引 手形債権 小切手債権
(2) 登記 東京法務局品川出張所
平成元年一月二三日受付 第一四九三号
2 被担保債権及び請求債権
(1) 被担保債権
下記債権のうち極度額金四千万円の範囲
① 平成二年二月二七日、債務者桜井岩次郎との間の金銭消費貸借契約に基づく金五八〇〇万円の貸金債務(支払期日を平成二年六月二七日とする一括払いの約定)を連帯保証した桜井孝に対する金五八〇〇万円の連帯保証債務
② 上記①債務の支払のために裏書された別紙手形目録記載の約定手形の裏書人としての手形債務金五八〇〇万円の内金
(2) 請求債権
上記①②記載の債権の一部金四〇〇〇万円
別紙手形目録
〔約束手形〕
金額 五八、〇〇〇、〇〇〇円
満期 平成二年六月二七日
支払地 東京都品川区
支払場所 太陽神戸銀行旗ノ台支店
振出地 東京都品川区
振出日 平成二年二月二七日
振出人 有限会社桜井食料品店
代表取締役 桜井孝
受取人 佐藤みさ子
第一裏書人 同上
(支払拒絶証書作成義務免除)
被裏書人 白地
第二裏書人 桜井孝
(支払拒絶証書作成義務免除)
被裏書人 白地
第三裏書人 株式会社富士幸
代表取締役 本島武治
(支払拒絶証書作成義務免除)
別紙物件目録
所在 品川区旗の台五丁目一二三九番地
家屋番号 同町五三番
種類 店舗
構造 木造亜鉛メッキ鋼板瓦交葺二階建
床面積 一階35.53平方メートル
二階24.79平方メートル